翌日、仕事を普段の倍のスピードでこなす、僕。
(あいつ、何張り切っているんだ?いつもと違うぞ。)
という、視線を十二方向から感じつつも、
シャカリキになって働く。
周りの、痛過ぎる程の視線を感じても、
18時迄にキッチリ終えねばならないのだ。
何せ、今夜19時に美樹と待ち合わせて、
プロ野球ナイター観戦デートなんだから。
いつになく、スムースに仕事が片付いたところで、
時計の針は18時を5分程過ぎていた。
(さぁ、急がなきゃ。待たせちゃ悪いもんな。)
机上を片付けて、帰宅の身支度を済ませ、
会社を後にした。
最寄の駅に着き、改札をくぐると、ちょうど、
球場に向かう電車がホームに到着した。
ホームの列の最後尾から、電車に乗ると、
偶然にも、扉の片隅に彼女がいた。
球場のある駅までの乗車時間は、5分程度
なのだが、何といっても美樹との初デート。
ましてや、社内のアイドルとくれば、緊張しないで
いられるわけがない。
でも、この偶然がもたらしてくれた“5分間”が、
その緊張を和らげてくれた。
(とはいっても、やはり僕の笑顔は“つくり笑顔”
だったかもしれないが。)
球場に到着した頃、試合は既に、3回の攻防が終わり、
中盤を迎えるところだった。
ビールとつまみを両手に、指定のシートに2人は腰かけた。
白熱した投手戦を堪能しながらも、僕の意識は、
回を追う毎に、美樹へと比重が移る。
時計の針が進み、21時を越えようかというところで、
彼女の応援するチームが勝利。
勝利の美酒を、ということで、彼女のマンションの近くの
居酒屋へ足を向けた。
実は、ナイター観戦中、何事もなかったかのようにスルー
したのだが、凡そ不謹慎だぞ!
と、お叱りを受けるかもしれないのだが、球場はドームではなく、
秋風が寒さを誘う為(?)、
僕の右手が、彼女のミニスカートの洞窟の中に...。
美樹の左手が、僕のスラックスの丘の上に...。
膝掛けで覆いながら、互いに身体を熱らせるように努めていた
のである。
(日本人の手ってのは、プライベートでも“勤勉さ”を
発揮するんだぁ。感心、感心。)
目的の居酒屋に着き、乾杯を済ませ、野球談議やお互いの
趣味の話、社内での面白話、それぞれの好きなタイプの人の
話題から下ネタまで、楽しい時間が音速の如く過ぎ往く。
酒のチカラか勢いか、ほろ酔い顔の美樹の色香故か、
僕の肉龍が熱を帯びていく。
(まずい!)
このままでは席を立つことも、恥ずかしくてできない。
しかし、この肉龍は、僕の意思にに反して、今にも
昇天しそうな程、威風堂々としている。
(こうなったら仕方無い。駄目もとで...。)
気がつくと、終電もない時間に。
彼女に、今夜泊めてもらえないか、と尋ねてみる。
(“田舎に泊まろう!”で、15軒連続で断られた後の、
切羽詰まった感じで?!)
・・・・・・。
暫く、沈黙が続く。
店内の雑然とした音声をも、かき消すが如く...。
無言で、お願いポーズを続ける、僕...。
・・・・・・。
更に、お願いポーズのままの、僕の右の瞼が開き、
美樹の表情を盗み見する。
頬にえくぼを浮かべながら、盗み見中の僕の右目を
ジーッと見つめつつ、彼女の右手に“OKサイン”がっ!
僕の右心房と左心房が、大きくガッツポーズ!!
≪つづく≫
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